だいぶ前に、
「フランス人は10着しか服を持たない」
という本を読んだ。
フランス人ってお洒落な人が多いよね
と前々から思っていたのが、当時この本を読んで腑に落ちた。
この本の主人公は、
典型的なカリフォルニアガールの女子大生ジェニファー。
フランスに留学中、貴族の邸宅で暮らすことになり、
そこでホストマザーのマダムシックに出会う。
ある日、マダムに買い物に誘われ一緒に歩いている途中、
「そのセーター似合ってないわね」
とマダムに言われ、ガガーーン、、とショックを受けるジェニファー。
頂き物で何となく着ていたスプリンググリーンのアンサンブルニット。
「でもこれ、シルクとカシミアなんです!」
と傷ついたジェニファーが反論すると、マダムが言う。
「色がよくないの。その色はあなたに全然似合わない。
顔色が黄色っぽく見えるわ。
あなたも女性として、自分に一番似合う色を知っておかないとね。
誰も言ってくれなかったらわからないでしょう?」
そして、エメラルドグリーンやミントグリーンなら
ジェニファーにとってもよく似合うはず、
とアドバイスをくれるマダムに、
傷ついて頑なになったジェニファーの気持ちもほぐれていく。
マダムが優しく言う。
「何が自分の美しさを引き立てるのか、
逆に台無しにしてしまうのか、
自分自身でよく観察しなければいけないわ。
女性なら誰だってそうするべきよ」
マダムの言葉に、ジェニファーはあることに気づく。
今までいいと思った服を着ているつもりだったけど、
何が自分をより美しく見せるかを知り尽くした上で服を選ぼう
なんて、考えたこともなかったと。
そして、スプリンググリーンのアンサンブルニットを着て
ワクワクしていなかった自分に気づいたのだ。
それから、ジェニファーの意識は変わった。
恋人からのプレゼントだからとか、
衝動買いで失敗したけどもったいないからとか、
トレンドの服だからとか。
そうではなくて、
自分が本当に好きな服を着よう、
自分によく似合って
自分がどういう人間かを表現してくれる服を着よう。
と意識がチェンジしたのだ。
マダムも含め、フランス人のお洒落な女性たちは
決して服をたくさん持っている訳ではないようである。
どんな服を着れば自分の美しさが引き立つのかを熟知し、
自分に似合って、自分らしいくつろいだ気分になれる服を
ローテーションしながら着ていくのだ。
クローゼットも小さくて、
パンパンに服が詰まっている
なんてことは決してない。
本当にそうなのだ。
色や素材、
襟ぐりのラインに袖のボリューム、
シルエット。
それらが、自分の生まれ持ったボディカラー、
骨格や体型と調和したとき、
その服は、その人にとって最強の一枚になる。
そして、最強の服はそんなにたくさんは要らない。
何故なら、自分の個性や魅力を知って選んだ服は、
共通要素があってそれぞれ相性がいいから。
相性がよければ、コーディネートも楽ちんなのだ。
トレンドに振りまわされず、
自分流のお洒落を確立し
しなやかにファッションを楽しんでいるフランス人。
カッコよくて素敵だなあと思う。
せっかく服を着るならば、
心がときめいて、楽しくなって
自分にワクワクする。
そんな服を着よう。
自分に似合う服は、
きっと気持ちを豊かにしてくれる。
意識が変われば、
ジェニファーのように、
きっと人生も素敵に変わるのだ。
三木 沙織