人はある時、
「それまでの自分を変えてくれる色」
との出会いがあるものだ。
再び、デパガをしていた時のエピソードである。
前回の続きになるが、私は百貨店に入社して三年目、
J&Rという婦人服のブランドから一階の服飾品売場に異動になった。
私は、お客様に合う服をコーディネートしながら
コミュニケーションをとるのが楽しくなっていたので、
上司から異動の話を打診されるや否や
「嫌です!私は婦人服がやりたいんですっっ!!」
と、生意気にも鼻息荒くNO!を突き付けた。
すると全く動じない上司は、笑顔で「服だから」と一言。
聞くと、服飾品売場に入っている数少ない婦人服のショップの一つが、
メーカーから派遣されているスタッフから
百貨店の社員で運営していくことになったとのこと。
「そのお店の行く末、あなたの肩にかかっているのよ!」
と上司にのせられ、スイッチの入った私。
「わかりましたあっっ!!!」
と意気揚々に、一階の服飾品売場へ異動する運びとなった。
ショップの名前は、「 PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE 」。
デザイナーの三宅一生さんが創造し編み出した、
全部プリーツでできた色鮮やかな服が並ぶブランドである。
ショップに立つ私ももちろんプリーツの服を着るのだが、
一番最初に選んだ服が、冒頭の写真の色。
鮮やかなレモンイエローのプリーツの服だった。
既にショップを担当し、プリーツの服を知り尽くしていた先輩から
「あんた絶対似合うから。これにしな!」
と言われ、「はあ」と従ったものの
レモンイエローのチュニックにレモンイエローのパンツである。
上から下まで真っ黄色なのだ。
お陰様で、ついたあだ名はイエロー番長!
アクセサリー売場や化粧品売場の派遣さん達からは
「イエロー番長!」と声をかけられることが多くなり、
なかなか名前で呼んでもらえなかった(苦笑)
だが、新しい環境と、多分このレモンイエローの服の力のお陰で。
私は、それまで鬱屈と抱えていた思いから
一気に!開放されてしまった。
「もう誰に気兼ねすることなく接客ができるんだ」
と、ずっと私をせき止めていたストッパーが外れたのだ。
ブランドショップでは、
大概がメーカーの派遣さん主体で運営をし、
派遣さんたちには個人売り上げのノルマがある。
私は接客が楽しくて、もっともっとしたいと思っていたけれど
J&Rにいた時は、派遣さんたちへの配慮もあり、
雑務に従事することが多かったのだ。
自分たちで全てを運営していくPLEATS PLEASE では、
私を含め百貨店の社員三人がショップのメンバー。
三宅一生さんのプリーツ加工の技術が世界的に注目を浴びる中、
そのプリーツの服が、通常のラインナップよりも
お求めやすい価格で購入できるPLEATS PLEASE という
ブランドの認知度が上昇していく時期だったということもあり、
ショップの顧客も面白いほど増え、
開店から閉店まで接客に明け暮れた。
そして、私はどんどん変わっていった。
自分をさらけ出し、
服を介して交わされるお客様との会話を心から楽しんだ。
誰に指図されることなく、
自分の感性で、自由に思うように、
存分に接客をすることができたのだ。
この時期に体感したものが、
きっと現在のカラーアドバイスに活きているのかな
と、いま実感している。
黄色は、光の色である。
色の中では、白の次に光が多く含まれ、
自己解放を促し、良くも悪くも自分がさらけ出されるのだ。
あの時、確かに私はあのレモンイエローの服の力で
自分をさらけ出すことが楽になった。
そして変わっていったのだ。
どんな場面においても
その人にとって役に立つ色、
力になってくれる色があると思う。
そんな色との出会いを
これからも楽しんでいきたい。
三木 沙織